趣味の着物
2026年5月18日

「単衣(ひとえ)の着物は、6月と9月だけのもの」
そんなイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。

けれど今の気候やライフスタイルを考えると、単衣はもっと自由に、そして心地よく楽しめる存在へと変わってきています。

着物をこれから始めたい方にも、すでに楽しんでいらっしゃる方にも。
今回は“今の時代に合った単衣の楽しみ方”を、やさしくご紹介いたします。

着物の基本と、少しだけ柔らかな考え方

伝統的な着物の着用時期は、次のように分けられています。

  • 10月~5月:袷(あわせ/裏地あり)
  • 6月・9月:単衣(ひとえ/裏地なし)
  • 7月・8月:夏物(なつもの/薄物(うすもの))

このような「衣替え」の考え方は、季節を大切にする日本らしい美意識のひとつです。

一方で近年は、春や秋でも汗ばむ日が増え、従来の暦通りでは少し無理を感じる場面も出てきました。

そんなときは、決まりを大切にしながらも、
ご自身の体感に寄り添って選ぶという柔軟さを持ってもよいのではないでしょうか。

単衣の魅力は“軽やかさ”と“品のよさ”

単衣(ひとえ)は裏地(うらじ)がない分、見た目にも着心地にも軽やかさがあります。

同じ反物(たんもの)から仕立てられていても、袷(あわせ)とはまた違った、すっきりとした印象。
裾さばきを整えるための力布(ちからぬの)や居敷当(いしきあて)が施されているため、実用性も兼ね備えています。

さらりとまとって、自然に美しく。
その控えめな軽やかさこそ、単衣ならではの上品さといえるでしょう。

シーンによって“装いの基準”を変える

着物には、場面に応じた装いの考え方があります。

たとえば、結婚式やお茶席(ちゃせき)など、格式(かくしき)を重んじる場では、これまでの暦に沿った着こなしが安心です。

一方で、日常のお出かけやお食事の席では、そこまで厳密である必要はありません。

その日の気温やご自身の心地よさを大切にしながら、
「今日は単衣にしようかしら」と選ぶ時間もまた、着物の楽しみのひとつです。

単衣におすすめしたい素材選び

単衣をより美しく、そして快適に楽しむためには、素材選びも重要です。

ほどよい張りがあり、さらりとした着心地のものがおすすめです。

【左】近江ちぢみ【右】大島紬
  • 塩沢紬(しおざわつむぎ)
  • お召(おめし)
  • 大島紬(おおしまつむぎ)

いずれも上品な風合いがあり、単衣の軽やかさを引き立ててくれます。

お好みや体感に合わせて、ご自身にしっくりくる一枚を見つけてみてください。

半衿(はんえり)で整える季節の調和

単衣の装いで、ぜひ意識していただきたいのが半衿(はんえり)です。

着物を単衣にしたからといって、すぐに夏用の絽(ろ)へ切り替えるのではなく、
半衿は衣替えの流れに合わせて整えることで、全体に自然な調和が生まれます。

  • 春・秋:塩瀬(しおぜ)などの落ち着いた素材
  • 夏:絽(ろ)や紗(しゃ)の涼やかな素材
凸凹の素材は春・秋におすすめ

細やかな部分ではありますが、こうした積み重ねが装いの美しさにつながっていきます。

色と質感で表現する“季節の気配”

単衣は長い期間楽しめるからこそ、色や質感で季節感を表現することが大切です。

初夏には、淡く涼やかな色合いを。
秋口には、少し深みのある落ち着いた色味を。

同じ単衣でも、選び方ひとつで印象は大きく変わります。

さりげなく季節を映し出す――
そんな装いができるのも、着物ならではの魅力です。

単衣をもっと身近な存在に

かつては限られた時期の装いとされていた単衣ですが、
今では春から秋にかけて、幅広く活躍する一枚となっています。

軽やかで、心地よく、そして品よく装える単衣。

これから着物を始める方にとっても、無理なく取り入れやすい存在です。

最後に

着物にはさまざまな決まりがありますが、
それは“楽しむための土台”でもあります。

そのうえで、ご自身の感覚や心地よさを大切にしながら、
今の季節に寄り添う装いを選んでいく。

その積み重ねが、自然で美しい着こなしへとつながっていきます。

単衣を取り入れて、
軽やかで上品な着物時間を、ぜひお楽しみください。

6月のイベントのご案内

6月6日(土)11:30~14:00
「単衣を楽しむランチ会」
ブッフェスタイル

会場:BAR&GRILL Splish(ココノススキノ7階)
会費:4,000円

季節に寄り添う単衣の装いで、ゆったりとしたひとときをご一緒しませんか。
これから着物を始めたい方のご参加も、心よりお待ちしております。

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