「男性が着物?」と思われる方も、まだまだ多いかもしれません。
着物というと、女性が華やかな振袖や訪問着を着ている姿を思い浮かべる方も多いでしょう。
一方で男性の場合は、「着物を着る機会なんてない」「着方が難しそう」「何を選べばいいのかわからない」と感じて、興味はあってもなかなか一歩を踏み出せない方が少なくありません。
実は私も、最初から着物に興味があったわけではありませんでした。
きっかけは、秋祭りで知人に誘われて浴衣を試着したこと。実際に袖を通してみると、普段の洋服とはまったく違う感覚がありました。背筋が自然と伸び、いつもより少しだけゆっくり歩きたくなる。鏡に映った自分を見て、「男性の着物もなかなかいいものだな」と思ったのです。
それをきっかけに、今度は浴衣だけでなく、秋から本格的に着物を始めてみようと思うようになりました。
今回は、そんな着物初心者の男性に向けて、秋から着物を始めるメリットや、最初の一枚を選ぶときのポイント、着物姿をきれいに見せる所作(しょさ)についてご紹介します。
「男性が着物を着るのは珍しい」は、もう気にしなくていい
男性が着物を始めようとするとき、最初にぶつかるのは意外にも「着物そのもの」ではなく、「自分が着ても大丈夫なのだろうか」という気持ちかもしれません。
「男性が着物を着るなんて珍しいのでは?」
「周りから浮いてしまわないだろうか?」
「着物に詳しくないのに、お店に行っても大丈夫?」
そんな不安を感じるのは、ごく自然なことです。
しかし、実際に着物を着てみると、男性の着物姿には女性とはまた違った魅力があることに気付きます。
男性の着物は、女性の着物のように色や柄をたくさん組み合わせて華やかさを楽しむというより、落ち着いた色合いやシンプルな組み合わせの中に、その人らしさを表現できます。
だからこそ、初心者にも始めやすいのです。
最初から「完璧な着物姿」を目指す必要はありません。
まずは一度、袖を通してみること。
それだけでも、今までとは違う着物の世界が見えてくるはずです。
男性初心者が秋から着物を始めるメリット
では、なぜ秋なのでしょうか。
大きな理由の一つが、季節に合わせて着物を選びやすい時期だからです。
秋は、夏の単衣(ひとえ)から、裏地のついた袷(あわせ)へと季節が移っていく時期。気温も少しずつ落ち着いてくるため、着物を着て外出するには気持ちのよい季節です。
そして何より、秋には着物で出かけたくなる場面がたくさんあります。
秋祭り、紅葉狩り、文化的な催し、食事会など、季節を感じながら楽しめる機会が増えてきます。
着物は、ただ「服として着る」だけではありません。
その季節の景色や行事と一緒に楽しむことで、より魅力が深まります。
特に北海道の秋は、紅葉が美しい季節です。深い赤や黄色に色づいた木々を背景に、紺や黒、深緑などの着物を合わせると、落ち着いた大人の装いになります。
「着物を着てどこへ行こう?」
そう考えるところから、着物の楽しみは始まっているのかもしれません。
初心者の男性は、どんな着物を選べばいい?
「着物を始めたい。でも、何を買えばいいのかわからない」

これは初心者の方からよく聞く悩みです。
男性の着物を選ぶときは、まず色から考えてみるとよいでしょう。
秋の男性着物なら、紺、深緑、黒、グレーなどの落ち着いた色がおすすめです。
こうした色は普段の感覚にもなじみやすく、派手になりすぎません。それでいて、着物ならではの上品さや落ち着きを感じさせてくれます。
柄についても、最初は無地や古典柄(こてんがら)のようなシンプルなものを選ぶと合わせやすいでしょう。
市松(いちまつ)、麻の葉(あさのは)、矢絣(やがすり)など、昔から親しまれてきた柄には、さりげない存在感があります。
また、素材については、綿や綿を含む扱いやすい素材から始める方法もあります。
着物というと「高価で特別なもの」というイメージを持っている方もいますが、最初から格式の高い着物を揃える必要はありません。
まずは、自分が着てみたいと思える一枚を選ぶことが大切です。
紋(もん)についても、最初は紋の入っていない着物から気軽に始めるとよいでしょう。
男性着物は、女性の着物と比べると色や柄の選択肢がある程度絞られています。
一見すると選択肢が少ないように感じますが、実は初心者にとっては大きなメリットです。
「何を選べばいいのかわからない」という悩みが少なく、自分に似合う色を見つけやすいからです。
帯はどうする?男性着物の基本
着物を着るなら、帯(おび)についても知っておきたいところです。
男性の帯は、女性の帯に比べて細く、結び方も比較的シンプルです。
初心者の方は、「帯をきれいに結べるだろうか」と心配になるかもしれません。しかし、ここも最初から完璧を目指す必要はありません。
着付けを習いながら、帯の位置や締め具合、結び方を少しずつ覚えていけば大丈夫です。
むしろ、男性着物の場合は、帯そのものを華やかに見せるというより、着物全体とのバランスを考えることが大切です。
紺や黒などの落ち着いた帯なら、さまざまな着物に合わせやすく、初心者でもコーディネートしやすいでしょう。
男性の着物姿は「所作」で決まる
実際に着物を着てみて、私が強く感じたのが「所作(しょさ)の大切さ」です。
男性着物は、女性の着物のように帯結びや小物で華やかに見せるというより、着物を着たときの姿勢や歩き方が、そのまま印象につながります。

たとえば、背筋を伸ばして立つだけでも、着物姿はぐっと美しくなります。
歩くときは、普段の洋服のときよりも少し歩幅を小さくすることを意識してみましょう。大股で歩くと裾(すそ)を踏んでしまうこともありますし、着物のシルエットも崩れやすくなります。
また、無意識に帯へ手をかけたり、ポケットを探すような動作を繰り返したりすると、少しだらしなく見えてしまうことがあります。
着物を着たら、ほんの少しだけ動作を丁寧にする。
それだけで、着物姿が自然に見えてきます。
もし着崩れしてしまったときも、慌てる必要はありません。人目につかない場所で、そっと整えれば大丈夫です。
着物は「きれいに着ること」だけではなく、「きれいに振る舞うこと」まで含めて楽しめる衣服なのです。
秋は着物を始める絶好のタイミング
秋は、暑さが落ち着き、外へ出かけるのが楽しくなる季節です。
着物を着て紅葉を見に行ったり、食事を楽しんだり、秋祭りへ出かけたり。
「着物を着るために出かける」という楽しみ方もできます。
そして、秋に着物を始めれば、冬の間に着付けを練習する時間も作れます。
最初は、着物を羽織るだけでも時間がかかるかもしれません。
帯がうまく結べなかったり、衿(えり)の位置が決まらなかったり、裾の長さに迷ったりすることもあるでしょう。
でも、それでいいのです。
何度か練習するうちに、少しずつ手が覚えていきます。
「着方がわからない」なら、着付けを習ってみよう
私自身、最初に一番困ったのは「着方がわからない」ということでした。
動画を見たり、本を読んだりすることもできますが、実際に着物を着てみると、「この部分はどうすればいいの?」という疑問が次々に出てきます。
そんなときは、実際に人から教えてもらうのが一番の近道です。
花いち都屋の着付け教室では、男性の初心者の方も安心して学べます。
「帯はどこに結ぶの?」
「裾の長さはどのくらい?」
「着物を着たまま、どう動けばいい?」
そんな基本的な疑問も、実際に先生に聞きながら覚えていけば、決して難しいものではありません。
少人数で学べる環境なら、周りを気にせず質問できるのも嬉しいところです。
着物は、知れば知るほど奥深いものです。
けれど、最初の一歩は決して難しいものではありません。
男性だからこそ楽しめる、着物の世界へ
着物を着るようになると、不思議なことに、今まで見えていなかったものが見えてきます。
街で着物姿の人を見かけると、自然と目に入るようになります。
季節が変われば、「そろそろ単衣かな」「秋らしい色を着てみたい」と考えるようにもなります。
そして何より、一枚の着物を長く大切に着るという文化の豊かさにも気付かされます。
流行の洋服とは違い、着物には何十年という時間を一緒に過ごせるものがあります。
最初は「男性が着物なんて」と少し照れていたとしても、一度着てみると、その感覚はきっと変わるでしょう。
男性の着物姿は、決して特別なものではありません。
むしろ、シンプルだからこそ、その人の雰囲気や立ち姿が引き立ちます。
この秋、「着物を着てみたい」と少しでも思ったなら、それは始める絶好のタイミングです。
まずは浴衣でも、着物の試着でも構いません。
実際に袖を通してみることから始めてみませんか。
新しい季節と一緒に、新しい自分の楽しみ方が見つかるかもしれません。
著者より
初めは「男性が着物を着るのは少し照れくさい」と感じていた私ですが、実際に着てみると、その魅力にすっかり惹かれてしまいました。
着物は、ただ昔ながらの服を着るということではありません。
姿勢が変わり、歩き方が変わり、季節の感じ方まで少し変わってくる。
そんな小さな変化を楽しめるのが、着物の面白さなのだと思います。
「着物に興味はあるけれど、自分には難しそう」と思っている男性の皆さん。
ぜひ、この秋から一緒に着物を始めてみませんか。
花いち都屋の着付け教室では、初心者の方も歓迎しています。わからないことは、どうぞ遠慮なく先生に聞いてみてください。
最初の一歩を踏み出せば、きっと今までとは違う着物の世界が広がりますよ。
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