2025年10月6日

「着物って素敵だけど、季節の変わり目の装いが難しそう…」
「初心者にはハードルが高いのでは?」
そう思っていませんか?特に、これからの季節、秋の深まりから冬の寒さへと移り変わる時期は、洋服でも「何を着よう?」と悩みがちですよね。


でも、ご安心ください。着物には、日本の気候に合わせて長年培われてきた、素晴らしい「知恵」と「工夫」があります。そして、その中心となるのが、袷(あわせ)の着物なのです。

袷(あわせ)の着物とは? – 10月から5月を包む、ぬくもりの装い


袷の着物とは、名前の通り、裏地(胴裏や八掛)がついている仕立ての着物のこと。衣替えの習慣に基づいて、一般的に10月1日から翌年の5月いっぱいまで着用される、最も長く活躍する着物です。この裏地があるおかげで、袷は単衣(ひとえ:裏地のない着物)よりも格段に暖かく、秋から冬、そして春先まで、私たちを優しく包んでくれます。洋服でいうと、コートやジャケットを羽織るように、気候に合わせて暖かさを調整できるのが魅力です。


このブログでは、まさにこれから着物を始めたい!というあなたのために、秋から冬にかけての袷の着物を、おしゃれで快適に着こなすための秘訣を、ぎゅっと詰め込んでお伝えします。


【第一章】季節ごとの「着る景色」を楽しむ


袷の着物を着る醍醐味は、季節の移ろいを装いで表現できること。気温の変化に合わせて、素材や色、柄を選ぶことで、あなた自身が美しい日本の景色の一部になれるのです。


秋(10月~11月)– 色で深みをまとう


10月に入っても、日中はまだ暑い日もありますが、朝夕はひんやりとしてきます。この時期の着物選びのテーマは「残暑に寄り添い、色で季節を先取る」こと。

  • 生地感の選び方: まだ真冬のような厚手の生地は避け、軽やかさも残した、さらりとした絹や上質なポリエステルなどがおすすめです。
  • 色と柄で魅せる: 着物で秋を表現する一番簡単な方法は「色」です。例えば、秋の夜長を思わせる「栗色」「こげ茶」や、紅葉のような「深い赤」や「橙」など、深みのある暖色系を取り入れましょう。また、柄も「紅葉」「すすき」「菊」といった秋のモチーフを選べば、街を歩くだけで季節感が引き立ちます。
  • イベントにも活躍: お茶会や結婚式といったフォーマルなシーンでは、訪問着や色留袖といった格のある着物が活躍します。柄を控えめに、シンプルなデザインで品格を演出すると、洗練された大人の着こなしになりますよ。


冬(12月~2月)– ぬくもりを重ねて、シックに


12月に入ると、いよいよ本格的な冬の寒さ。着物でお出かけするためには、万全の防寒対策が欠かせません。

  • 素材選びが最重要: 寒い時期は、防寒効果の高い「厚手の真綿紬(まわたつむぎ)」など、見た目にもあたたかな生地がおすすめです。絹の着物でも、ずっしりとした重厚感のあるものが適しています。
  • 冬の色で引き締め: 雪や氷を思わせる「濃い青」「紫」「黒」を基調にした色合いは、冬らしくシックで落ち着いた雰囲気を醸し出します。寒色系の濃色を選ぶことで、着こなし全体が引き締まり、洗練された印象になります。


【第二章】着物のおしゃれは「小物合わせ」にあり!


袷の着物をより美しく、そして暖かく着こなすためには、帯や小物、防寒アイテムとのコーディネートが鍵となります。
帯と小物で「季節のメリハリ」をつける着物と帯の組み合わせはもちろん大切ですが、着こなしの印象を決定づけるのは、実は帯締めや帯揚げといった小さな小物たちです。

  • 秋の小物: 帯揚げや帯締めに「金茶」「深緑」「橙」といった、実りの秋を感じさせる落ち着いた色合いを使うと、着物に深みが生まれます。
  • 冬の小物: 冬には「白」「淡いグレー」「銀」など、澄んだ空気や雪を連想させる冷たい色味を取り入れてみてください。全体のトーンが明るくなり、冬の装いに軽やかさが加わります。


防寒対策は「おしゃれの一部」として


寒い季節の着物のお出かけで最も重要なのが、防寒対策です。しかし、ただ暖かければ良いわけではありません。防寒アイテムも、コーディネートの一部として美しくまとめましょう。

  • 羽織とコート: 着物の上に羽織る「羽織」や「コート」は、洋服でいうアウターと同じ役割。ウールやカシミヤなどの上質な素材を選べば、それだけで格調高い印象になります。道行コート、道中着、そして洋装にも合うケープなど、形も様々です。
  • ショールの魔法: 首元を優しく包むショールは、着物姿をエレガントに仕上げる必須アイテム。柔らかいウールの大判ショールや、カシミヤなどの上質なものを肩に羽織れば、暖かさはもちろん、洗練された印象を与えます。

【第三章】冷えから守る!「見えない工夫」で快適に


着物は重ね着の文化。裏地のある袷の着物でも、冬の厳しい寒さには、さらに「インナー」や「足元」の工夫が大切になります。

  • 進化したインナー: 最近では、着物専用の「ヒートテック」のような機能性インナーが販売されています。薄手で暖かく、衿元から見えないように設計されているので、美しい着姿を保ちながら防寒できます。肌襦袢の下に着るだけで、体感温度がぐっと上がります。
  • 足元の温もり: 足袋は、足の冷えを防ぐ最重要アイテム。通常の綿足袋に加え、裏地がフリースや起毛素材になった冬用の足袋は、一度履くと手放せなくなるほどの快適さです。
  • 雪国の知恵、防寒草履: 北海道のような雪の多い地域でなくとも、冬の雨や雪の日に活躍するのが「防寒草履」です。爪先を覆うカバー(爪皮)が付いており、草履の底も厚く滑りにくい設計になっています。これを一足持っておけば、突然の天候変化にも安心です。


最後に – あなたの着物ライフは、今始まる!


秋から冬にかけての袷の着物は、季節の変化を全身で感じながら、ぬくもりと美しさを両立できる、最高の装いです。
難しく考えず、「今日はこの色の葉っぱみたいに着てみよう」「雪の日の空の色を帯揚げに取り入れてみよう」と、洋服と同じように、まずは「色」や「柄」で遊ぶことから始めてみませんか?


あなたの心に秘めた「着物を着てみたい」という気持ち。それを叶える一歩を踏み出してみましょう。着物はあなたに、日本の四季折々の美しさを感じさせてくれる、素晴らしい物語を与えてくれるはずです。さあ、この秋から、あなたらしい着物ライフをスタートさせましょう!

着物姿の女性達の集合写真

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