袷（あわせ）の着物って？袷の意味や選び方などを紹介
10月になると、いよいよ着物も「衣替え」のシーズンを迎えます。
夏に着ていた単衣（ひとえ）の着物から、裏地の付いた袷（あわせ）の着物へと変わる時期です。裏地が付くことで生まれる重厚感は、秋らしい落ち着きや品格を感じさせてくれます。
けれども、実際に「袷とはどういうものなのか？」「どんな場面で着るのがふさわしいのか？」と戸惑う方も多いのではないでしょうか。
ここでは、袷の基本から季節に合わせた楽しみ方までを丁寧にご紹介していきます。
袷（あわせ）とは？
袷とは、着物の仕立て方のひとつです。
胴や袖、裾部分に裏地（うらじ）を付けて仕立てられており、見た目にも厚みや高級感が出るのが特徴です。裏地があることで、風を通しにくく保温性が増すため、秋から春先までの涼しい季節に活躍します。
見た目の美しさだけでなく、写真を撮った時に映える点も魅力のひとつです。初心者の方にとっても「特別感」が感じられる仕立て方といえるでしょう。
着物の裏、全面に裏地が付いた物が袷（あわせ）
袷の着物を着るのに適した時期
袷は一般的に10月から翌年5月までの、比較的気温の低い時期に着るのが基本とされています。特に10月は、夏の暑さも落ち着き、空気が澄んで過ごしやすい季節。紅葉や秋祭りなど、季節の行事も多く、袷を楽しむ絶好のタイミングです。
6月から9月までは暑さが厳しく、袷では重たすぎるため、単衣や薄物（うすもの）が活躍します。
逆に10月になると、気温が下がり始めるので、袷の裏地がちょうど心地よく感じられるのです。
季節に合わせた仕立てを選ぶことは、日本の四季を肌で感じながら着物を楽しむ大切なポイントでもあります。
季節感を演出する色や柄選び
洋服と同じように、着物も季節に合った色柄を選ぶことで一層おしゃれに見えます。袷は秋・冬・春と長いシーズンにわたって着られるので、選び方の幅が広いのも魅力です。
秋は、赤みを帯びた暖色系の色合いで
まず秋は、朱色や茶色といった赤みを帯びた暖色系の色合いがよく映えます。特に紅葉や桔梗（ききょう）、ぶどうなどをモチーフにした柄を選ぶと、秋らしい風情がぐっと増します。紅葉狩りや秋祭りに出かけるときには、こうした色柄の袷をまとえば、景色と調和しながら季節を存分に楽しめます。
冬は寒さを感じさせない華やかな色合いを
次に冬は、木々が葉を落とし、景色が少し寂しく見える季節です。
だからこそ、寒さを感じさせない華やかな色合いを取り入れるのがおすすめです。
例えば、真紅や深い紫、あるいは金糸をあしらった帯と組み合わせることで、冬の装いに温かさと華やぎが生まれます。柄は梅や竹、菊などの伝統的なものを選ぶと、お正月やお祝いの席にもふさわしい印象になります。
春は花々の彩るピンクや爽やかな緑で
そして春には、桜や牡丹のような花々が似合います。パステルカラーや淡いピンクを取り入れると、柔らかく女性らしい印象を与えてくれるでしょう。桜の季節を過ぎたら、新緑を思わせる爽やかな緑や水色を選ぶことで、春の移ろいを感じさせる装いが完成します。
袷に合わせる長襦袢（ながじゅばん)
袷の着物の下には、長襦袢を着るのが基本です。長襦袢には裏地が付いていないタイプと、裏地の付いた袷長襦袢があります。
室内で過ごす時間が長い日や暖房の効いた場面では、軽やかで蒸れにくい裏地のない長襦袢が快適です。
一方で、冬の屋外や結婚式・お宮参りなど改まった場面では、防寒性に優れた袷長襦袢を合わせると安心です。
どちらを選ぶかによって快適さが変わるため、用途に合わせて用意しておくと重宝します。
TPOに合わせた袷の着物選び
袷の着物は、シーンに合わせた選び方が大切です。
例えば結婚式やパーティーなどの華やかな場では、訪問着（ほうもんぎ）や留袖（とめそで）がふさわしい選択です。豪華な柄や格調のある意匠が施されているため、お祝いの場にふさわしい印象を与えてくれます。
お子さまの入学式や卒業式、あるいはお宮参りのような節目の行事では、色無地（いろむじ）や附下げ（つけさげ）が最適です。落ち着いた雰囲気の中にきちんと感を漂わせることができるため、フォーマルな場に安心して着ていけます。
観劇や街歩きなど、もう少しカジュアルに楽しみたいときには紬（つむぎ）や小紋（こもん）が大活躍します。
紬は糸の風合いが素朴でありながら個性的な柄も多く、周りと違う着こなしをしたい方におすすめです。小紋は細かな柄が全体に広がっているため、上品でちょっとしたお出かけやランチ、美術館めぐりなどにぴったりです。
袷の魅力をさらに楽しむ工夫
袷は裏地は裏地がついているため、本来涼しい季節に着るものですが、工夫次第でより快適に、長く楽しむことができます。
涼しく着る為に「胴抜き仕立」がおすすめです。これは、着物の胴体部分の裏地をなくして、仕立てる方法です。上半身の暑さが軽減され、特にお太鼓の枕部分に汗をかきやすい方にも効果的です。
また、帯や小物を工夫すれば、一枚の袷でもさまざまな印象に変化させられます。
帯揚げや帯締めに季節を感じさせる色を取り入れれば、同じ着物が全く違う雰囲気に。半衿に刺繍を入れたり、草履やバッグで遊び心を加えたりするのも楽しい工夫です。
こうした小さな変化を楽しむことで、袷の着物はより長く、そして愛着深く着続けられるでしょう。
10月は衣替えとお手入れのタイミング
10月は、単衣から袷へと衣替えをする時期です。夏に活躍した浴衣（ゆかた）や単衣の着物をしまう際には、必ずお手入れをしてから収納するようにしましょう。汗抜きや丸洗いを済ませておけば、翌年も気持ちよく袖を通すことができます。
袷は裏地がある分、湿気を含みやすい点に注意が必要です。収納時は風通しのよい場所を選び、着物専用のたとう紙に包んで保管しましょう。また、年に数回は虫干しをして空気を通すことで、美しい状態を長く保つことができます。ほんの少しの工夫で、大切な一枚を長持ちさせることができるのです。
まとめ
袷の着物は、秋から春にかけて長い期間楽しめる頼もしい存在です。10月はそのスタート地点。
色柄の選び方やシーンに合わせた装い方を工夫することで、日常が一段と華やぎます。初心者の方も、まずはお気に入りの袷を一枚選んでみてください。着物を通して、四季折々の美しさや日本ならではの文化を存分に味わえるはずです。
10月は、単衣の着物から袷の着物に、衣替えの時期。夏にお召しになった、夏着物・単のきものなどのお手入れもお気軽にご相談くださいませ。
今回も最後までお読み下さり感謝です！ありがとうございました。
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