趣味の着物
2026年9月7日

暦の上では、9月はもう「秋」。朝晩に少しずつ涼しい風を感じるようになり、「夏も終わりだな」と思う頃です。

……とはいえ、北海道でも9月はまだまだ残暑が残ります。近年は気温の高い日も多く、「秋だから涼しいはず」と思って着物(きもの)を着てみたら、思った以上に暑かった!という経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

暑さ対策をしながら、夏の着物を楽しんできた方にとっても、「そろそろ秋の装いにしなくては」と悩み始める時期です。

着物には季節に合わせた装いのルールがあります。9月になれば、基本的には夏着物(なつきもの)から秋の着物へと移っていきます。

とはいえ、実際の気温は暦通りには変わってくれません。

そこで今回は、9月の着物姿を少しでも快適にするために、「足元」に注目してみたいと思います。

9月の着物、何を着ればいい?

9月の装いを考えるとき、まず気になるのが着物そのものです。

夏の代表的な着物といえば、絽(ろ)や紗(しゃ)。どちらも透け感があり、風を通しやすく、暑い季節に向いた着物です。

9月になると、こうした盛夏(せいか)の着物は基本的には出番を終えていきます。

しかし、9月上旬など、まだまだ暑さが厳しい時期もありますよね。

そんなときには、透け感が比較的少なく、それでいて涼しげに着られる紋紗(もんしゃ)、夏お召(なつおめし)、夏大島(なつおおしま)などを選ぶという方法もあります。

もちろん、地域やその日の気温、着物の種類によっても考え方は変わります。「9月だから絶対にこれ!」と難しく考えすぎず、季節感と気温のバランスを考えながら装うことも、着物を長く楽しむコツです。

そして、もうひとつ忘れてはいけないのが「履物(はきもの)」。

実は、足元を少し変えるだけでも、着物姿の印象はぐっと変わります。

では……夏の履物って?

「夏の履物」と聞くと、特別なもののように感じる方もいるかもしれません。

けれど、基本的には夏らしい素材を使った草履(ぞうり)や下駄(げた)のこと。

時期としては、主に5月頃から9月頃まで使われるものがあります。ただし、着物の衣替えと同じように、日にちだけで区切るのではなく、実際の気温や装いとのバランスを考えて選んでもよいでしょう。

夏の履物に使われる代表的な素材には、

  • 麻(あさ)
  • パナマ
  • 竹(たけ)
  • 畳表(たたみおもて)

などがあります。

こうした天然素材には、見た目にも涼しげな雰囲気があります。

さらに、素材によっては通気性にも優れているため、暑い時期の足元を少し快適にしてくれます。

特に畳表の下駄などは、素足で履いたときのさらりとした肌触りも魅力のひとつ。

夏の暑い日に靴を履いていると、足の裏が汗ばんでしまうことがありますよね。着物姿でも同じように、足元の蒸れやべたつきが気になることがあります。

そんなとき、通気性のよい素材の履物を選ぶと、足元の不快感が軽減されます。

「着物は暑そう」というイメージがある方こそ、実はこうした細かな工夫が大切なのです。

夏草履はカジュアルだけ?TPOも気になるところ

「天然素材の履物というと、普段着用なのでは?」

そんな疑問を持つ方もいらっしゃるでしょう。

確かに、麻やパナマなどを使った履物は、カジュアルな着物との相性がとても良いものです。

たとえば、夏紬(なつつむぎ)や絽小紋(ろこもん)など、少し肩の力を抜いて楽しむ着物に合わせると、涼しげで粋(いき)な雰囲気になります。

素材感のある履物を合わせることで、着物との季節感がそろい、全体のコーディネートがまとまりやすくなります。

夏のフォーマル草履

一方で、「夏の履物=カジュアル」というわけではありません。

フォーマルな場面にも合わせられる、夏向きの草履があります。

たとえば、夏素材の生地を使った台や、夏帯(なつおび)に使われるような素材の鼻緒(はなお)を合わせた草履などです。

もちろん、どの草履でもどんな着物にも合わせられるということではありません。

結婚式や正式な食事会など、きちんとした装いが求められる場では、着物の格やTPOに合わせて履物を選ぶ必要があります。

初心者のうちは「この着物には、この草履で大丈夫?」と迷うことも多いもの。

そんなときは、着物だけを見るのではなく、着物・帯・帯締め・帯揚げ・草履までをひとつのコーディネートとして考えると分かりやすくなります。

麻やパナマは、夏らしいおしゃれを楽しみたい方に

夏の履物の中でも、麻やパナマを使ったものは、素材そのものが持つ涼しげな表情が魅力です。

作り方やデザインにもよりますが、夏紬などのカジュアルな着物に合わせると、とても素敵です。

夏のカジュアル草履

着物を始めたばかりの頃は、「着物のルールを間違えたらどうしよう」と、つい難しく考えてしまいがちです。

でも、少し慣れてきたら、ぜひ素材感にも注目してみてください。

同じ着物でも、どんな草履を合わせるかによって、印象は変わります。

「今日は涼しげにしたい」

「少し粋な雰囲気にしたい」

「夏らしいおしゃれを楽しみたい」

そんな気分から履物を選んでみるのも、着物の楽しみ方のひとつです。

9月に浴衣を着るなら、足元でひと工夫

9月になっても、まだ暑い日には浴衣を楽しみたいことがあります。

特に最近は、浴衣を単なる夏祭りの装いとしてではなく、着物風に着こなす方も増えています。

半衿(はんえり)を見せて、足袋(たび)を合わせるなど、少し着物らしい着こなしにすると、浴衣の印象も変わります。

畳表の下駄

そんな着物風の浴衣に、畳表の下駄を合わせると、ぐっと雰囲気が出ます。

「浴衣なのに、なんだか素敵」

そんな装いを作るポイントは、実は足元にもあるのです。

暑い日は「足袋」も見直してみましょう

履物と一緒に考えたいのが、足袋です。

一年を通して綿の足袋やストレッチ足袋を使ってももちろん構いません。

ただ、暑い日には「麻足袋(あさたび)」を試してみるのもおすすめです。

麻は通気性がよく、汗をかきやすい季節にも向いている素材。

実際に履いてみると、綿の足袋とはまた違ったさらりとした感触を感じる方も多いでしょう。

「足袋なんてどれも同じじゃないの?」

と思われるかもしれませんが、素材が変わると履き心地も変わります。

特に長時間着物を着る予定がある日には、こうした小さな違いが意外と大きな快適さにつながります。

また、レース素材を使った足袋もあります。

レースというと「透けるのでは?」と心配になる方もいるかもしれませんが、透け感を抑えたものや、綿素材を組み合わせたものもあります。

見た目にもおしゃれなので、夏らしい着物姿を楽しみたい方にはおすすめです。

「夏だから夏草履」は絶対のルールではありません

ここまで夏の履物についてお話ししてきましたが、ひとつ覚えておいていただきたいことがあります。

それは、「夏だから必ず夏草履を履かなければならない」というわけではないということです。

夏草履は素敵だけれど、お値段やお手入れのことを考えると、なかなか手を出しにくい……という方もいらっしゃるでしょう。

また、着物を始めたばかりの方なら、「履物まで季節ごとに揃えるのは大変!」と思ってしまうかもしれません。

それなら、まずは今お持ちの履物を大切に使いながら、必要になったときに少しずつ選んでいけばよいのです。

着物は、季節のルールを知ることも大切ですが、何よりも「実際に着て楽しむ」ことが大切。

暑い日は暑いなりに、できるだけ快適に過ごせる方法を探してみましょう。

9月だからこそ、来年の夏に向けて準備を

「もう9月!5月に知りたかった~!」

と思った方もいるかもしれませんね。

でも、大丈夫です。

今年の夏に気になったものがあれば、来年に向けて少しずつ準備しておけばよいのです。

「今年は足が暑かったな」

「もっと涼しい足袋が欲しかった」

「夏草履って素敵だったな」

そんな経験が、来年の着物選びにつながります。

着物は、最初からすべてを揃える必要はありません。

一枚の着物、一枚の帯、ひとつの小物……と、季節を重ねながら少しずつお気に入りを増やしていくのも楽しいものです。

特に履物は、着物姿全体の印象を左右するだけでなく、自分自身の快適さにも関わる大切なアイテム。

「足元が快適なだけで、こんなに楽なんだ!」

という発見があるかもしれません。

近年の夏は、とにかく蒸し暑く、気温も高くなっています。

それでも「着物を楽しみたい」という気持ちは、暑さに負けたくないものですよね。

だからこそ、着物や帯だけでなく、足袋や履物にも目を向けてみてください。

夏らしい素材を取り入れた足元は、見た目にも涼しげ。

そして、自分自身も快適に。

そんな小さな工夫を重ねながら、季節に合わせた着物のおしゃれを楽しんでみてはいかがでしょうか。

私の過去の記事もご覧ください